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ナビエストークス方程式の導出

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ナビエストークス方程式(以下NS方程式)とは流体力学において、流体の運動を記述するための重要な方程式です。

流体の運動の様子を記述するには任意の位置・時間での流体の速度v圧力p密度ρがわかれば良いので、NS方程式はこの三つの文字を含む方程式になります。

ナビエストークス方程式

$$\rho \left \{\dd{\bol v}{t}+(\bol v \c \nabla)\bol v \right \}=-\nabla p+\mu \nabla ^2 \bol v +\rho f$$

一見難しそうな式に見えますが、高校物理やった方ならなんてことはない、これはただの運動方程式なのです。(fは単位体積あたりに流体にかかる外力です。)

運動方程式

$$m\frac{d \bol v}{dt}=F$$

つまり、左辺のかっこの中は加速度に対応し、右辺はすべて流体にかかる力に関わる項ということになります。

さらに単位体積の流体に注目すれば質量は密度ρであることを考えるとNS方程式の見え方がかなり変わるのではないでしょうか?

ではそれぞれの項について詳しくみていこうと思います。

加速度に対応する項

まず先ほどの説明で不思議に思ったのは、

$(\bol v \c \nabla)\bol v$←この可愛いダブルピースだと思います。

なぜ加速度に対応する部分なのに速度の時間微分$\dd{\bol v}{t}$だけでなくダブルピースが存在するのか?

それは物質微分という微分を用いるためです。

物質微分

古典力学とは違う部分として、流体力学では流れに乗って移動する流体粒子の物質量を考えなければなりません。

つまり古典力学では速度は時間のみの関数として表せましたが、流体力学では速度は時間と位置の関数であることがダブルピース出現の理由ということになります。

古典力学では位置と時間が従属(位置が時間の式で表せる)なので、速度を時間のみの式で表せたが、流体力学では位置と時間が独立(位置が時間の式で表せない)ので速度は時間と位置の両方を使わないと表せない。

速度vが位置rの関数でもある、つまり$\bol v = \bol v (\bol r \\, t)$であることを考慮すると、

$$\bol a = \frac{d \bol v}{dt}$$

$$=\frac {\bol v (\bol r +\Delta \bol r \\,t +\Delta t)- \bol v (\bol r \\,t)}{dt}$$

ここで、$\Delta \bol r =\bol v \Delta t$であることから、

$$\bol a = \frac {\bol v (\bol r +\bol v \Delta t \, ,t +\Delta t)- \bol v (\bol r \\,t)}{dt}$$

ここで、$x$成分のみを考えると、

$$\bol a_x = \frac {v_x (x + v_x \Delta t \, ,y + v_y \Delta t \, ,z + v_z \Delta t \, ,t +\Delta t)- v_x (x \, ,y \, ,z \, ,t)}{dt}$$

分子に1次のテイラー展開を用いると、

1次のテイラー展開

$$v_x (x + v_x \Delta t \, ,y + v_y \Delta t \, ,z + v_z \Delta t \, ,t +\Delta t)$$

$$=v_x + \dd{v_x}{x} v_x \Delta t + \dd{v_x}{y} v_y \Delta t + \dd{v_x}{z} v_z \Delta t +\dd{v_x}{t} \Delta t$$

$$=\frac {\dd{v_x}{x} v_x \Delta t + \dd{v_x}{y} v_y \Delta t + \dd{v_x}{z} v_z \Delta t +\dd{v_x}{t} \Delta t}{dt}$$

$$={\color{red}\dd{v_x}{x} v_x + \dd{v_x}{y} v_y + \dd{v_x}{z} v_z} +\dd{v_x}{t}$$

$$=\dd{v_x}{t}+ {\color{red} (\bol v \c \nabla)v_x }$$

この赤色の項は移流項と呼ばれます。

圧力項

点$(x,y,z)$を中心とする微小直方体にかかる圧力による力を求めます。

$x$方向のみを考えると、微小直方体にかかる力は

$$p(-\frac{dx}{2},y,z)dydz-p(\frac{dx}{2},y,z)dydz$$

1次のテイラー展開を用いると、

$$(-\dd{p}{x}\frac{dx}{2}-\dd{p}{x}\frac{dx}{2})dydz$$

$$=-\dd{p}{x}dxdydz$$

微小直方体の体積は$dxdydz$なので、単位体積あたりにかかる圧力の力の$x$成分は$-\dd{p}{x}$であり、$y$方向、$z$方向も同様に考えると、

$$(-\dd{p}{x},-\dd{p}{y},-\dd{p}{z})=-\nabla p$$

粘性力

流体の粘性による力を粘性力といいます。

微小直方体にかかる粘性力は面に垂直な方向だけでなく、面に並行な方向にもかかります。(摩擦力のようなもの)

微小直方体のx方向面にかかる単位面積あたりの粘性力を$\tau _{xx},\tau _{xy},\tau _{xz},$と表すと、x方向に及ぼす力はx面のx方向の力$\tau _{xx}$・y面のx方向の力$\tau _{yx}$、z面のx方向の力$\tau _{zx}$なので、これらを圧力項を考えた時と同様にすると、

$$\dd{\tau _{xx}}{x}dx \cdot dydz+\dd{\tau _{yx}}{y}dy \cdot dxdz+\dd{\tau _{zx}}{z}dz \cdot dxdy+$$

$$=(\dd{\tau _{xx}}{x}+\dd{\tau _{yx}}{y}+\dd{\tau _{zx}}{z})dxdydz$$

よって単位体積あたりでは$\dd{\tau _{xx}}{x}+\dd{\tau _{yx}}{y}+\dd{\tau _{zx}}{z}$の粘性力を受ける。

また、$\tau _{xx}$らは粘性応力と呼ばれ、ニュートンの実験によって次の式で表せることがわかっています。

粘性応力

$$\tau _{ij}=\mu (\dd{v_i}{x_j}+\dd{v_j}{x_i})$$

$(i,j=x,y,z)$

これを用いると、微小直方体にかかるx方向の力は

$$\mu \dd{}{x}(\dd{v_x}{x}+\dd{v_x}{x})+ \mu \dd{}{y}(\dd{v_y}{x}+\dd{v_x}{y})+ \mu \dd{}{z}(\dd{v_z}{x}+\dd{v_x}{z})$$

$$=\mu (\dd{^2v_x}{x^2}+\dd{^2v_x}{y^2}+\dd{^2v_x}{z^2})+\mu \dd{}{x}(\dd{v_x}{x}+\dd{v_y}{y}+\dd{v_z}{z})$$

$$=\mu \nabla ^2 v_x + \mu \dd{}{x} \nabla \cdot \bol v$$

ここで、非圧縮性流体の場合、$\nabla \cdot \bol v =0$なので、y方向、z方向も考えると粘性力は

$$\mu \nabla ^2 \bol v$$

まとめ

これでナビエストークス方程式を導出することができました。

運動方程式だとわかっただけでもずいぶん見方が変わったのではないでしょうか?

ちなみにNS方程式はミレニアム懸賞問題の一つにもなっており、一般解を見つけると一億円もらえるそうな…

この記事の執筆者
理系さん

理系の現役京大生。
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