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名探偵コナン 灰原の計算シーンを解説

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灰原の計算シーンとは

灰原というのはあの有名な名探偵コナンの登場キャラクターです。

映画「名探偵コナン 天国へのカウントダウン」のラストシーンでコナンたちは左のビルの上にいるのですが、そのビルがは数分後に爆破されてしまいます。

そこでコナンたちはこんなことを思いつきました。

ビルから脱出するためにその場にある車に乗って向かいのビルまで飛び移ろうアイデアです。

空中での落下速度

物体というのは、空中では重力の影響を受けるので一定の割合でスピードを上げていきます。

地球の重力の場合は1秒ごとに9.8m/sづつスピードを上げていくことになります。

例えば、ボールが落下すると、スタート時点(0秒後)は速さvはv=0m/s、1秒後は9.8m/s、2秒後はさらに9.8早くなって速度は19.6m/sとなります。

では、この2秒間で物体はどれくらいの距離を進んだでしょうか?

距離を求めるために使う公式は小学校で習いましたよね。

速さ(m/s)×時間(s)=距離(m)

つまり、19.6(m/s)×2(s)=39.2(m)

しかしこれは間違いです。

なぜなら今回速さを19.6(m/s)と表しましたが、19.6m/sなのは2秒後の瞬間だけで、落ちる速度というのは19.6m/sの一定値ではなく、0m/sから徐々に加速していくからです。

では、2秒という時間を「0から1秒」と「1秒から2秒」という二つの区間に分けて考えてみたらどうでしょうか。

二つの区間に分けて考えると、「最初の1秒で進んだ距離」・「次の1秒で進んだ距離」はそれぞれの区間で速さ×時間を計算すると

  • 9.8(m/s)×1(s)
  • 19.6(m/s)×1(s)

なので、合計で進んだ距離は9.8×1+19.6×1=29.4mという値になります。

しかし、これでもまだ正しいとは言えません。

なぜなら、これも先ほどと同様に「0から1秒」、「1から2秒」の間では速度が変化していない前提での計算だからです。

ですが、最初にやった計算よりは正確になってきました。

では次は4つの区間で分けて考えてみましょう。具体的には0.5秒ごとに区切ることになります。

そうすると、4つの区間で進む距離はそれぞれの区間で速さ×時間を計算すると、

  • 4.9(m/s)×0.5(s)
  • 9.8(m/s)×0.5(s)
  • 14.7(m/s)×0.5(s)
  • 19.6(m/s)×0.5(s)

よって、合計で進む距離は4.9×0.5+9.8×0.5+14.7×0.5+19.6×0.5=24.5mとなります。

かなり精度は上がってきましたが、これでもまだまだ正確な値とは言えません。

正確な値を求めるには?

2秒をn個の区間に分ける

先程の計算のように2つ、4つと、より多くの区間に分けると正確さも増していきました。

正確に測るにはその区間を無限まで増やしてあげればいいのです。

どういうことか解説していきます。

先ほどの2秒をnコに分けます。そうすると区間1つが$\frac{2}{n}$秒となります。

1つ目の区間後は速さが$9.8\frac{2}{n}$、2つ目の区間後は速さが$9.8\frac{2}{n}2$…であることに注意すると、それぞれの区間で進む距離は

  • $9.8\frac{2}{n}×\frac{2}{n}$
  • $9.8\frac{2}{n}2×\frac{2}{n}$
  • $9.8\frac{2}{n}3×\frac{2}{n}$
  • $\cdots$

よって、合計で進む距離は$9.8(\frac{2}{n})^2(1+2+3+\cdots +n)$となります。

ここで$(1+2+3+\cdots +n)$の部分は等差数列なので、自然数の和の公式を用いると、

$$1+2+3+\cdots +n=\frac{1}{2}n(n+1)$$

自然数の和の公式

$1+2+3+\cdots +n=\frac{1}{2}n(n+1)$

これを代入すると合計で進む距離の最終的な式は

すると、$9.8(\frac{2}{n})^2×\frac{1}{2}n(n+1)$となります。

nを無限として考える

「区分を細かく分ければ分けるほど正確な数値が出る」と説明したのを覚えているでしょうか。

正確な値を出すためにnを無限として考えてみると、nとn+1は同じ数字と見なすことでき、約分できます。

$$9.8\cdot \frac{2}{\cancel n}\cdot \frac{2}{\cancel n}\cdot \frac{1}{2}\cancel n\cancel{(n+1)}$$

$$9.8\cdot \frac{1}{2}\cdot 2^2$$

よって、2秒では物体は$9.8\cdot \frac{1}{2}\cdot 2^2$m進むことになります。

3秒間進む場合でも同じ計算をすれば進む距離は$9.8\cdot \frac{1}{2}\cdot {\color{red}3}^2$mと求めることができます。

灰原の計算

では灰原さんがした計算をしてみましょう。

ビルの高低差20mを落下するのにt秒かかるとしてみます。

先程の計算から、t秒間で落下する距離は

$9.8\cdot \frac{1}{2}\cdot {\color{red}t}^2$mのはずで、これが20mということは

$$9.8\cdot \frac{1}{2}\cdot {\color{red}t}^2=20$$

これをtについて解いてあげると、

$$t=\sqrt{\frac{2\cdot 20}{9.8}}$$

これは灰原さんんが言っていた

$t=\sqrt{\frac{2\cdot s}{g}}$という式ですね。(ここではgを重力か速度、sを落下する距離としているようです。)

これを計算すると2.02。

つまり、約2秒で落ちるという結果を求めることができます。

そして、この2秒で隣のビルに飛び移る必要があるので、距離60mを2秒で進もうとすると、必要な速さは$60m÷2s=30m/s$ということになります。

この記事の執筆者
相川辰治

このサイトの設立者に雇われ馬車馬のごとく働かされているものです。
数学は結構好きです。

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